国土交通委員会 第17号 2009-06-16

質問要旨
●タクシー特措法について
1.3会議体の役割、機能について
2.協議会の再編成、再統合について
3.現在、市町村で行われている福祉有償運送の審査について
●特措法の効果
1.協調減車がうまく進まなかった場合の責任主体は運輸局か。不服審査申し立ての相手先は運輸局か。
●監査体制の充実
1.監査体制の詳細について
2.業界団体による内部監査について
●強制減車と営業権の侵害
1.定率減車命令の可能性について
●タクシー規制緩和の総括
1.例外なき規制緩和についての大臣の所見如何
●運賃審査についてのガイドライン
1.自動認可運賃の巾の設定について
2.下限割れ運賃の審査について

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
まず初めに、このタクシーの新たな特措法ということの前段ということにもなるかもしれませんが、あるいはそれも含めてということになるかもしれませんが、地域における公共交通政策全般ということでお聞きをさせていただきたいと思います。
今回の特措法でも国が指定する特定地域において、地方運輸局長、地方公共団体の長、タクシー事業者、タクシー運転士、地域住民等の地域の関係者が協議会を組織をする、そして特定地域において地域計画を立てると、こういう仕組みになっているわけでございます。
特定地域協議会ということでございましょうけれども、今日お手元にもお配りさせていただいております資料にもございますように、この協議会と言われるもの、あるいは協議する場というのが、地域においては今回新たにつくられる特定地域協議会のみならず、地域公共交通会議とか運営協議会とか、あるいはもっと言えば、地域公共交通再活性化事業における会議というのもございまして、お手元の資料だけ見てもこの三つの会議体、ちょうど真ん中からちょっと下に二重線がございますけれども、これよりも上が必須のメンバー、構成員というふうにまとめられております。ほとんど重なっているということなんですよ。いろんなことが地域で自治体中心に協議をするという機能が要請されております。
ここにある三つのまず会議体、それぞれの役割また機能につきまして、簡単で結構ですが、御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(本田勝君) かいつまんで御説明申し上げます。
まず、本法案の協議会は、タクシーについて、供給過剰で問題が生じている特定地域において供給過剰に伴う問題を解決するための協議を行うと、これが目的でかつ趣旨でございます。それから、地域公共交通会議、これはいわゆるコミュニティーバスあるいは乗り合いタクシーといった形で、地域のニーズに応じた乗り合い輸送サービス、この普及促進をするために地域の公共交通の在り方を議論していただくということで、地方自治体の主催で設置をさせていただいております。それから、運営協議会、これは自家用の有償の旅客運送という形態で、過疎地有償運送あるいは福祉有償運送について、他方でタクシー事業者の方との関係についてどう整理するかといったような議論をしていただくために、これも地方自治体の主催によって設置されているもので、それぞれの設置の目的が異なり、また、本法案の協議会はタクシー事業だけを対象とするようなものでありますが、御指摘のとおり、地域の交通、移動手段の在り方を協議するという点では一致しておると思います。

○西田実仁君 この黄色で網を掛けたところは同じ人たちなんですよね、同じ属性というかですね。
私は、今回、特定地域協議会が新たにタクシーとして設けられる、地域公共交通会議はコミュニティーバスとか乗り合いタクシーであると、運営協議会は有償運送であると、福祉有償運送ですね、ということで、例えばこの運営協議会、私の地元埼玉でも幾つかのところで行われています。とりわけこの移動制約者の社会参加の促進ということで、福祉有償運送ということが既にスタートしておりますけれども、現実は、地域における生活交通全般を考えようとしたときには、決して福祉有償運送だけではなくて、その後どうディマンドバスにつなげていくのかとか、あるいはタクシーをどう利用いただくのかとか、こういう生活圏全般の交通体系をどうするのかということを考えなきゃいけないわけなんですよね。
ですから、運営協議会でも新たに始めようという人が出てこなければなかなか開催されないという問題もありますけれども、この運営協議会だけに限ってみても、移動制約者の方の足をどう確保するのかというのは、この協議会だけではなかなか実はうまく体系化して議論がなされないというふうに現実がなっていると思うんですね。つまり、私が言いたいのは、利用者、生活者ということの視点から地域の公共交通政策全般をやはりきちんと統合的に見直しをしていく、再編成をしていくということをしない限り、これからの高齢社会の中では足りないのではないかと、こんな問題意識を持っております。
大臣にちょっとお聞きしたいんですけれども、こうした地域にはいろんな多様な利用者の方々がいらっしゃいます。そして、その時々に応じていろんな交通手段をお使いになる。そうした交通手段、選べる交通手段を、どうその環境を整備するのかということが地域における公共交通政策では大事だと思っています。それには、供給側というよりも利用者の側の視点からもう一度この地域の生活交通全体を見直しをしていく。これだけ重なっていますから、それぞれ今すぐにということにはなかなかならないと思いますけれども、将来的な課題として、こうしたことを利用者の視点また地域というところに主体を置いて、交通政策協議会というような、全体を見渡していくような、また、そういう意味ではスイッチがきちっと利いていくようないろんな交通手段、そういう協議の場に再編あるいは統合していくというようなことが必要ではないかと思っております。大臣の御所見をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(金子一義君) いい御指摘だと思います。
本法案についての協議会、地域協議会、運営協議会それぞれ異なった役割はありますが、地域のそれぞれの協議会というのがほぼ人的に地域のメンバーでオーバーラップしてきていると。それから、このタクシー問題だけじゃなくて、ほかの公共交通機関あるいは都市計画といったようなものとも連絡を取りながら全体として体系をつくっていくという意味で、今委員御指摘のような、それぞれの委員会というものをまた整理統合するといいますか、これ、今のまま存在していくと生活者あるいは利用者の方々から非常に分かりにくいという面もあるかもしれません。そういう意味で、運用でこれをどういうふうにしていくのか、あるいはもう一遍全体として総くくりとしてどう位置付けるのか、いい御指摘いただいております。これはどうするのか、これは検討させていただきたいと思います。

○西田実仁君 ありがとうございます。
問題はしかしもっと進んでいくと思うんですけれども、結局、運輸行政全般にわたる話になるんですね。運輸行政全般、正直、国直轄でずっと来たわけなんですよ。ですから、協議会がこうやって必要に応じて、必要に迫られて地域につくられてきていますけれども、これまでが運輸行政全体は国が直轄して全部やってきたわけですので、正直、市町村に例えば限ってみても、交通政策全般を練る部署というのはほとんどない、お任せという状態になっております。また、市町村でそういう意味で交通政策を立案するプロフェッショナルというのもなかなか育たないと。現実はそうなっていますね。
ですから、運営協議会なんかでも、本当にいろんな試行錯誤をしながら少しずつつくり上げているという実態、この努力は大変なものだと思いますけれども。
今回も、特定地域協議会にはそういう運輸行政のプロの方のみならず地域住民という方も入ってくるわけですから、私はここで今回特にお願いしたいのは、先ほど佐藤先生からもお話ありましたけれども、この新たにつくられる特定地域協議会、また今回の特措法の意味とかあるいはその趣旨とか、これを分かりやすく、地域住民の方も含めて分かりやすく説明する何らかの、何というか、参考書というか、そういうものがないと大変混乱するんですよ。
実際に、例えばこの福祉有償運送の運営協議会の現場でも頻発しているんですけれども、道路運送法の改正がどういう内容なのかというのがよく周知徹底されていないんです。ですから、自治体も初めてですから、道路運送法の趣旨とは違って、より規制が物すごく厳しくなってしまったり逆であったりという混乱が生じている。こういうことがまたこの特定地域協議会で起きないように、特に運輸行政のプロの方じゃなくてもきちっと協議に参加できるような分かりやすい説明、分かりやすい周知徹底の何らかの手段を考えていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(本田勝君) まず、福祉有償運送の運営協議会につきましては、元々本来タクシー等公共交通機関が担うべき分野で、しかしその十分なサービスが提供されていないという中で、それを補完するものとしてNPOの方々を始めとする福祉有償運送を導入するということについて、関係者間の合意を形成するという目的で協議会があるわけでありますが、実態としては福祉有償運送を担うNPOの方々の御意見とそれからタクシー事業者の御意見が随分隔たりがあったりして、なかなか円滑に進まないというのは事実だと思いますので、これはこれでより円滑に意思疎通あるいは議論ができるように我々も対応していきたいと思います。
今回の法案による協議会につきましても、やはりタクシーという問題について、例えばそこで働いておられるタクシーのドライバーの労働条件がどうだということから始めて、何が起きているかという問題、それからこの法案で何をしようとしているのかという点、やはり地域の方々に御理解いただかないと実効のある地域計画ができないと考えておりますので、今御指摘のような参考書、あるいは様々な周知は図ってまいりたいと思っております。

○西田実仁君 それでは、より特措法の今回の話に焦点を絞りたいと思いますが、今回の特措法でその特定地域協議会において協調減車をする仕組みということができたわけなんですね。しかし、これまでの議論にもございましたとおり、これで果たして本当に効果が上がるんだろうかと。多くの方にお聞きすると、不安を抱えている方がやはり、事業者の方、また働いている方々というのが多いですね。
一言で言うと、やっぱり許認可権を全部持っているのは国なわけなんですよ、許認可権です。その許認可権を一手に握る国が減車命令を強制的に出すというリスクは、リスクという表現が正しいのか、そういうことはしないわけですね、協調減車ですから。で、許認可権を一切持っていない、先ほど協議会の話でしましたけれども、地域協議会にこの協調減車の合意取付けというものをゆだねている。そこの地域で協調して、協議して、減車することで決めましょうと、こういう話になっている。ですから、本当にその協調減車というものができるんだろうか、こういう不安に駆られる、あるいはそういう疑念を持っている方がまだ多いと。やってみなきゃ分からないわけですけれども。
こういうことに対してペナルティーがあるのかと、アウトサイダーに対して。先ほど、ペナルティーはないけれども、協力の要請をすると。局長も衆議院の御答弁でも、理解していただけるような仕組みづくりと、こういう表現をされておられます。万が一この協調減車がうまくいかなかった場合、その責任の主体はだれになるのかと。

○国務大臣(金子一義君) 西田委員、ちょっと今、強制減車しないのかよというお話あったんですが、民間の企業の財産ですから、国が強制減車ということはこれはやらないと。したがって、民間にお任せ、自主的にやっていただくことを期待するということでありますので、アイザー・オアということではない、はなから最初の選択肢は考えておりません。国が強制減車するということは考えておりません。
そういう中で事業者にどういう減車というものをやっていただくかという、そこのインセンティブがこれ大事になってくるとまさに思うんでありますけど、それについて、例えば減車を応じていただいた場合に監査の項目を少なくするとか期間を空けるといったような様々なインセンティブを働けるようなことは考えていきたいと思っております。
これについて、ちょっと局長から何か具体的なことがあれば説明してください。

○政府参考人(本田勝君) やはり減車ということになりますと、法制度の問題としては、事業者の皆さんの経営判断ということになると思いますけれども、私ども、法律上の責任とまでは言えませんけれども、本法案を出させていただいておる以上は、各地域での運輸局、精いっぱい様々な手法を活用しながら、まず協議の場にできる限り多くの方に参加していただくとともに、地方公共団体あるいは住民の方々にも参加していただくことによって、減車がやっぱり地域社会にとって必要なんだというような位置付けをすることによってより円滑にそれぞれの事業者の人が減車を決断する、そういった環境を整えていく必要があると考えますし、かつ、個々の減車という行為に対して、一つは、先ほども申しましたが、減車だけではなく、その町のタクシーを良くする前向きの取組をやっていただきますので、そういった前向きの取組に対しては様々な支援をさせていただきますし、かつ、現在行政運用でやっております特定特別監視地域制度の中で、一定以上の減車をされた方には原則監査を免除するといったような手法まで導入させていただいております。そういったあらゆる手法をちょっと考えさせていただければと思います。

○西田実仁君 思わず大臣がお答えいただきましたので、強制減車はしないという前提、それはなぜかというと、営業権の侵害であると、こういう進め方だというふうに思います。
しかし、実際に、一応これは議論ですけれども、特定地域では増車に枠をはめているわけですよね、特定地域では増車させないわけですよね。それは営業権の侵害じゃないんですか。

○政府参考人(本田勝君) これから新たに事業に参入する、あるいは今ある車両の規模を拡大するという、今ないものに対してこれは今回は御遠慮いただくというケースと、今もう既に一定の事業規模で営業されているそれを減らせという話は、やっぱり法律的には根本的に違うように思います。

○西田実仁君 情報の非対称性ということが言われますけれども、利用者はタクシーを選ぶ場合にはなかなか、来たものに対してこう手を挙げるということですから、また、どの運賃なのかと、そんなの分からないわけですので、情報の非対称性というのもあるんだと思うんですね。ですから、公道上で著しい情報の非対称性を持つ利用者にサービスを提供するタクシー業界に対しては、世界中どこでもそんなにもうすべて自由ですよということはあり得ないわけでありまして、それは当然世界共通のことだろうというふうに思います。
台数そのものを強制減車ということはしないということですけれども、例えば、じゃ台数のシェアですね、台数そのものという絶対数ではなくて、そのシェアを、つまり定率減車というような形で促していくということは法律上問題になるんですか。

○政府参考人(本田勝君) 例えば、その地域のタクシー需要から見てどの程度の車両数であれば適当なのかといったような、そういった数値を運輸行政を預かる運輸局の立場からお示しすると、したがって望ましい全体像はこのぐらいですよというようなお示しはできると思います。ちょっと個別に何割ずつ減車というところまで参りますといかがかという感じはいたしますが、一つ目標となるような数値を協議会の場で出させていただくといったようなことは考えさせていただきたいと思います。

○西田実仁君 先ほど、大臣から監査の話もありました。協調減車ということを促していくための監査、これを一つの、まあ道具ではないと思いますけれども、その一つの手段としても活用していくというお話だったというふうに思います。
この委員会でも既にいろんな議論あったと思いますが、監査体制の充実ということについて何か組織を見直すお考えなのか、あるいは、今までもやってこられましたけれども、監査要員を増やしていくということについてどんなお考えをお持ちなのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(本田勝君) 監査体制の強化は、逐次、大変厳しい定員事情ではありますけれども、拡大をさせていただいております。
平成14年7月時点で全国の地方運輸局の監査専門の担当官は108名でございましたが、今年度末の定員としては258名で、これはまたチャンスがあれば更に拡大を図ってまいりたいと思いますけれども、全体の定員事情はやはり厳しゅうございますので、定員を増やすと同時に、やはり限られた定員をいかに効果的に活用するか。
その意味では、めり張りのある監査を実施する、あるいは厚生労働省を始め関係省庁と連携することによって監査の効果を上げていくといったようなことが必要だと思いますし、もう一つは、やはり現在のような違法、不適切な事業運営の横行といったものに対処する上では、監査の結果出てまいりました問題に対する行政処分基準の強化、とりわけ労働関係法令違反に対する処分の強化といったことも考えていく必要があると思っております。

○西田実仁君 その監査ですけれども、公務員の皆さんによる監査というのはいろんな人数の制限とか当然あると思うんですね。しかし、これはきちんと監査体制を充実しなければ実効性が保てないと、こういうことにもなろうと思います。
例えば業界団体とかによる内部監査、これをより充実させてはどうかというアイデアもあるように聞いております。現実はなかなか難しい面もあろうかと思いますが、こうした内部監査ということも併せて監査体制の充実ということにも考えていかなければ十分なものにならないんではないかというふうに思いますけれども、いかがでございましょうか。

○政府参考人(本田勝君) 業界の中で個々の事業者の方の事業所にまで立ち入るということが果たしてできるかどうか疑問ではありますが、ただ、先生の御指摘のとおり、すべてが行政でやるというその前に、これはやはりタクシー事業がもたらす利用者あるいは地域社会の不便をなくしていく、問題を解消していくということでありますから、当事者である事業者団体自体が自助努力で主体的にこういった活動を行うというのは、業界の自浄作用、あるいは地域の中でタクシー業界が信頼を得る上でやはり重要だと思います。
そういう意味では、現在、例えば東京、大阪においてはタクシーセンターという国とは離れた法人、むしろ業界の方々の団体がございますけれども、このタクシーセンターが何をやっているかといいますと、タクシー業務適正化特別措置法に基づく適正化事業ということで、運転者自身の研修、あるいは街頭に出て問題のある営業車に対しては指導をする、あるいは消費者の方から来る苦情、これを処理し、それを反映して事業者の方に改善指導するといった取組をされております。こういった取組は、何も東京、大阪に限らず、ほかの地域でもやっていただくことが望ましいと思っております。
私ども、実は事業用自動車、バス、トラック、タクシーの安全対策に関しての総合対策をこの春まとめましたが、その中で、こうした事業者団体が行われる取組と我々の監査、これタイアップしてやっていく必要があるだろうと、ばらばらでやるのではなくて。したがって、例えばタクシーセンターからの街頭指導の情報、これを基に運輸局が動くとか、そういったことは考えていきたいと思っております。

○西田実仁君 ありがとうございます。
それで、ちょっとまた大きな話に戻って大臣にお聞きしたいと思いますが、今回の特別措置法を作らなければならなかった背景というのはもう既にいろんな御指摘がありました。先ほど大臣もおっしゃっておられましたが、このタクシーの問題というのは、規制ということについて規制緩和ということを進めてきたわけですけれども、全般的には、それを、ある意味でうまくいかなかったところを直していこうと、そういう非常に大きなテーマであるという御趣旨の話があったと思います。それを一言で言えば、例外なき規制緩和ということは決して正しいわけではないということを言われようとされているのかなというふうに思います。
タクシーの場合はまさにこの台数制限を外して規制緩和して、本来であれば、それぞれがいわゆる部分最適というか、自分にとって最大の利益があるだろうと思ってやったことが全体としても最適になればこれは一番いいわけですけど、いわゆる囚人のジレンマというようなゲーム理論もあるように、部分最適ではあるんですけれども全体にとってはもうかえってみんながマイナスになってしまうと、こういうことが実際に起きてきた。つまり、市場が失敗した、それで思っていたような政策効果も出なかったと、こういうマーケットなわけですよね。ですから、行政が介入をして、協調減車という形ではありますけれども、そういう場をつくっていくという今回の特別措置法につながっていると、私はそういうふうに理解しております。
そこで、大臣にお聞きしたいわけでありますけれども、こうしたタクシーのことを一つ例に挙げても、ほかにも多分そういう市場が失敗してしまうケースもあるんだろうと、また現にあるだろうというふうに思います。このいわゆる例外なき規制緩和ということについて、大臣の御所見というか、お考えをお聞きしておきたいと思います。

○国務大臣(金子一義君) 私は規制緩和担当大臣をかつてやっていたことがありました。規制緩和というものが一方でもたらしていく経済効果あるいは社会効果というのは、いい部分は山ほどあるし、多分まだまだこれからも、時代が変わる、あるいは国民の行動が変わることによって、あるいは選好が変わることによって規制を緩和していく部分というのはまだまだいろいろあるんだと思います。
ただ一方で、例外なき規制緩和というのは、もう西田委員、認識全く同じでありまして、市場がうまく機能しなかった、あるいはマイナスの現象が起こってきた、国民にとってあるいは事業者にとってあるいは働く人たちにとって、特に今回のタクシーの場合そうでありますけれども、国民全体のために必要があるものについては、今御指摘のように、修正を我々国会の責任において行っていくということはまさに必要なことであると思いますし、この分野が非常に大きな、今国会で取り上げられたということは第一号と私は思っているんですけれども、非常にそれだけに国民も多分注視している、マスコミも注視していることだと思いますけれども、行われたことだと思います。そういう意味では、認識は西田委員と同じであります。

○西田実仁君 そういう意味では、衆議院におきまして修正もなされて、与野党で様々な努力が重ねられて、こうした今形になっているということもまた大きな意義があるというふうにも思っております。
最後のテーマですけれども、運輸審査についてのガイドラインについてお聞きしたいと思います。
これは、研究会がこれからこの一、二か月で結論を出すと先ほど話もございました。幾つか確認をしたいと思います。この運輸審査についてのガイドラインは二つあると先ほど局長おっしゃいました。一つは自動認可運賃の幅の問題であると、そしてもう一つは下限割れ運賃の審査の在り方、この二つだというふうに思います。
この自動認可運賃の幅につきましては、先ほども御答弁ありましたけれども、上限運賃から10%下回る間のものについてはこれまで自動認可だったわけですよね。その10%をもうちょっと幅を狭めましょうと、こういう話ではないかと、そういう答弁されておられます。
私は、この縮小を仮にしても、自動認可ではなくて、その幅の縮小が、もちろんそれはいいことですけれども、その幅の中でもコンプライアンス等をきちんと見るという必要があるんではないか。あるいは、その何%の中であれば自動認可という、その何%というそういう線を区切ること自体も何かどういう意味があるのかという、議論を聞いていると思うわけですけれども、これについてどんなお考えになりますでしょうか、局長。

○政府参考人(本田勝君) 今先生からの御指摘は、まず第一、自動認可運賃の幅というのもなくしてしまって、上限、それを少しでも下回る運賃はすべて個別に審査するというような体制はどうかというお話かと思いますが、この点については、やっぱりタクシー事業の場合には、一地域で非常に多くの事業者がおられますので、上限運賃以外のすべての運賃、個別に審査するといった場合には、まず実際の行政実務としてそういったものが大量に出てきたときに効率的に処理するという上で問題が生じはしないかという懸念が正直一つございます。
それからもう一点、理論的なことから申し上げましても、上限運賃を若干下回っても、今回衆議院で修正されましたとおり、それが適正な原価に適正な利潤を加えたもの、あるいは不当な競争を引き起こすおそれがないものと判断される場合には、やはり個別に審査する必要はないのではないかと思います。
〔委員長退席、理事伊達忠一君着席〕
そういう意味で、ある一定の幅については、従来どおり自動認可という余地は残させていただきたいと思いますが、繰り返しになりますけれども、現在そこを当然のように1割としていることについては、元々それで本当に不当競争防止という点で全く問題がないと言えるのかどうか。さらに、今回衆議院での修正で新しい運賃基準としては、適正な原価に適正な利潤を加えたものであるという基準が加わりましたので、そういう見地からいっても、当然に10%であれば問題ないのかという点は、改めて検証し直す必要があると考えております。

○西田実仁君 今後についての今お話もいただいたんですが、現在あるいわゆる低運賃については何らかの対策をこれから打っていくことになるんでしょうか。

○政府参考人(本田勝君) まず、下限割れ運賃についての審査については、今回のガイドラインで基準をもう少し明確化したいと考えております。現在の基準というのは、収支率100%ということにすぎないわけでありますが、これにとどまらず、やはり不当な競争を防止する見地からはこの基準だけで足りるか、例えば労働条件の悪化の防止あるいはより消費者に密接な運行の安全の確保という見地から、この下限割れ運賃の審査についての審査基準を明確化する必要があると思っております。
それから、現在既にある下限割れ運賃の採用されておる事業者の方の問題につきましては、衆議院の附帯決議におきまして、下限割れ運賃を採用する事業者には、人件費、一般管理費、走行距離等、必要な指標につき定期的に報告を求め、その事業運営につき適切なチェックを行うという決議をいただいておりますので、この決議に基づく対応も的確にやってまいりたいと思います。

○西田実仁君 終わります。